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*公法講義T(統治組織)*


最終更新:H19.7.17(Tue)

1.講義の計画
公法講義Tは、水曜日の2限目、208教室で行われ、憲法の統治組織の分野を扱う。担当教員は話好きのお年寄りで(笑)、歴史や法制史、アメリカ法、フランス法などの知識をさらりと披露し、幅広い教養を示してくだり、好感が持てる。毎時間、判例全文のコピーが配布され、事前に読んでくることを前提として、その判例の解説および統治の原理やその事件の歴史的背景に講義時間の大半が費やされる。細かい統治機構の基礎は各自で勉強するほかないであろう。参考文献(実質テキスト)は、戸松秀典・初宿正典『憲法判例〔第5版〕』(有斐閣,2007年)である。

 第1回の講義は4月11日(水)にあった。配布レジュメは釜田泰介「司法制度改革の現代的課題―憲法的視点からの一考察―」法学教室253号23-29頁(2001年10月)であった。
 第二次大戦後、世界各国はアメリカの司法審査権制度を導入していくことになったが、わが国もその例外ではなかった。日本国憲法の下で裁判所に違憲審査をする権限が与えられたが、過去50年間、それがうまく機能したとはいえない。裁判所の違憲審査権を積極的に行使していくことが求められている。

2.窃盗被告事件(最大判昭和23年7月8日)
 第2回講義は4月18日(水)であった。

3.衆議院解散無効確認請求事件(最大判昭和28年4月15日)
 4月25日の第3回の講義は、第一次苫米地事件を扱った。


※課題1
GWの課題として、昭和20年代の判例を読み、そのうちのひとつについてのレポートを書くことが課された。大審院から最高裁判所に変わったばかりの時代(占領期も含む)の判決には、現在では当たり前となっている法理・解釈についての争いが見られ(例えば、衆議院の解散についての7条説と69条説の対立)、非常に興味深いものがある。
 『憲法判例』に見出しとして掲載されている昭和20年代の判決は、38件 である(538頁参照)。その内訳は、23年…11件,24年…5件,25年…9件,26年…1件,27年…3件,28年…6件,29年…3件である。

 
死刑合憲判決最大判昭23・3・12刑集2-3-191法律の定める「適理の手続」によって刑罰が科される。死刑は残虐な刑罰にはあたらない。332頁
準世帯米穀購入通帳虚偽記載事件最大判昭23・5・5刑集2-5-447「公平な裁判」(憲法37条)の意味309頁
プラカード事件最大判昭23・6・23刑集2-6-5291頁
裁判所法施行法等違憲訴訟最大判昭23・7・8刑集2-8-801506頁
物価統制令事件最大判昭23・7・19刑集2-8-922490頁
被告人の証人訊問申請事件最大判昭23・7・19刑集2-8-952315頁
「公判定での供述」による有罪認定違憲事件訴訟最大判昭23・7・29刑集2-9-1012327頁
食糧管理法違反事件最大判昭23・9・29刑集2-10-1235341頁
メチルアルコール不法所持事件最大判昭23・11・17刑集2-12-1565493頁
適用法令挙示判決最大判昭23・12・1刑集2-13-1661512頁
控訴審管轄違法訴訟最大判昭24・3・23刑集3-3-352423頁
出訴期間短縮違憲訴訟最大判昭24・5・18民集3-6-199430頁
生活擁護同盟事件最大判昭24・5・18刑集3-3-772378頁
食料緊急措置令違反事件最大判昭24・5・18刑集3-6-839168頁
再犯加重刑合憲判決最大判昭24・12・21刑集3-12-2062337頁
ヤミ米販売事件最大判昭25・2・1刑集4-2-73504頁
刑訴法応急措置法違憲訴訟最大判昭25・4・26刑集4-4-700335頁
個別訪問の禁止違反事件(1)最大判昭25・9・27刑集4-9-1799217頁
投票勧誘事件最大判昭25・9・27刑集4-9-1805336頁
尊属傷害致死事件最大判昭25・10・25刑集4-10-203785頁
刑訴規則施行規則無効訴訟最大判昭25・10・25刑集4-10-2151503頁
渡波町会議員選挙無効訴訟最一判昭25・11・9民集4-11-523415頁
山田鋼業事件最大判昭25・11・15刑集4-11-2257379頁
屠場開帳図利事件最大判昭25・11・22刑集4-11-238040頁
公務員の地位に基づく科刑差別訴訟最二判昭26・5・18刑集5-6-117582頁
国民審査投票方法違憲訴訟最大判昭27・2・20民集6-2-122495頁
警察予備隊違憲訴訟最大判昭27・10・8民集6-9-783505頁
鉄砲火薬類取締法施行規則無効訴訟最大判昭27・12・24刑集6-11-1346475頁
米内山事件最大決昭28・1・16民集7-1-12479頁
無許可の古物営業事件最大判昭28・3・18刑集7-3-577245頁
国選弁護人不選任事件最大判昭28・4・1刑集7-4-713317頁
政令201号事件最大判昭28・4・8刑集7-4-775384頁
農地改革事件最大判昭28・12・23民集7-13-1523271頁
皇居外苑使用不許可事件最大判昭28・12・23民集7-13-1561153頁
弁護士懲戒事件最二判昭29・7・2刑集8-7-1009339頁
渡里村基本選挙人名簿訴訟最大判昭29・10・20民集8-10-1907402頁
新潟県公安条例事件最大判昭29・11・24刑集8-11-1866158頁
一番右の「頁」の欄は戸松秀典・初宿正典『憲法判例〔第5版〕』(有斐閣,2007年)のページである。


4.関税法違反事件(最大判昭和35年10月19日 最高裁判所判例集第14巻12号1574頁)
 5月9日は関税法違反事件を扱う。
 
 被告人らは鹿児島港において、まだ日本領に復帰していない沖縄に向けて密輸出を遂げた。その行為が、関税法76条1項、104条、昭和二十四年大蔵省令36条、刑法60条違反に問われた。  一審の鹿児島地裁は被告人大町辰平に懲役8月、被告人島袋哲に懲役10月、被告人本川藤一らに各懲役4月、被告人松井光雄に懲役6及び罰金2万円の刑に処した(無罪となった被告人もいる)。なお、物件(換価代金)及び船舶が犯人の占有に係る物として関税法83条1項の規定により没収された。
 控訴審の福岡高裁宮崎支部は一部の被告人に関する部分を破棄した。

 被告側が上告。弁護人の上告趣旨の第5点において次のことが主張された。すなわち、関税法83条1項によって没収された本件船舶は、被告人ら以外の第三者の所有物であった。船舶の所有者は罪を犯していないのであるから、船舶の没収は違法であり、憲法31条違反となる。すなわち、本件船舶の所有者は直接没収刑を言い渡されないけれども、何ら手続なしに所有する船舶を没収されるのであるから適正手続の趣旨に反し、原判決は破毀を免れないと主張した。
 これに対して、最高裁は上告棄却の判示をした。31条違反の主張に対して多数意見は、本件没収について「他人の所有権を対象として基本的人権の侵害がありとし、憲法上無効であるである旨論議抗争することは許されない」と、違憲判断の余地はないとした。
 入江反対意見は「本件第三者没収をうける船主山田善吉に対し手続参加の機会を与えずその所有に属する浜栄丸の所有権を失わせるのは憲法31条に違反する」と述べ、憲法31条の要請から、何らかの事前の告知、聴問の機会を第三者に与えるべきであるとした(他4裁判官が入江反対意見に同調した)。
 次いで河村反対意見、奥野反対意見も存在するが、垂水補足意見は、第三者の不利益処分には告知と聴問が与えられなければならないが、被告人自体の訴訟手続には手続違反はないのだから、上告棄却した多数意見を支持する。
 また、飯坂補足意見は入江反対意見に反論しながら多数意見を補足している。最後に高木補足意見は第三者没収の規定は税関手続の適正な処理と犯罪の取締り・防止に万全に期しており、憲法に違反するものではないことを述べている。


※課題2
 5月16日提出の課題は昭和30年〜35年の判例を読んでレポートを書くというものである。先生は「5年ずつ」判例を読ませていくつもりらしいが、30〜35年は「6年分」ある。
 
公衆浴場事件最大判昭30・1・26刑集9-1-89公衆浴場営業距離制限の合憲性:国民に等しく公衆浴場を利用させるためのもので、無用の競争を生じさせ、衛生設備が悪化し、国民の保健衛生に影響を与えることを防止するものである
条例の制定範囲:公衆浴場法の例外を細かく定めたもので、法律の範囲を逸脱したものではない
249頁
公民権停止事件最大判昭30・2・9刑集9-2-217選挙の公正の保持:公民権が最も重要な基本的人権のひとつであるとはいえ、一定犯罪の場合に(公職選挙法252条1項4項)選挙権被選挙権の停止の処遇をしても不当に国民の参政権を奪うものということはできない。401頁
新聞紙の頒布・掲示の制限違反事件最大判昭30・2・16刑集9-2-305公職選挙法の頒布方法の制限は、憲法21条の表現の自由の保障には違反しない216頁
文書図画の頒布・掲示禁止違反事件最大判昭30・4・6刑集9-4-819選挙期間中の文書図画の頒布・掲示の制限は自由公正の保持という公共の福祉のためであり合理的な制限である。216頁
国税犯則取締法事件最大判昭30・4・27刑集9-5-924憲法35条は33条の場合を除外して令状無しに捜索・押収されないことを保障しているのであって、現行犯の場合にはその保障は及ばない。305頁
長野県風営法施行条例事件最一決昭30・12・8刑集9-13-262294条の「法律の範囲」の意味:風俗営業法3条は都道府県がこの種の営業について条例をもって定めうることを定めた規定であるから、長野県風俗営業取締施行条例18条1号が「遊技場の営業者又は従業者が賭博に類似する行為、その他著しく射倖心をそそるような行為をし又はさせてはならない」旨を定めても取締法3条の範囲を逸脱したものということはできない。528頁
緊急逮捕合憲判決最大判昭30・12・14刑集9-13-2760刑事訴訟法210条の合憲性:罪状の重い一定の犯罪のみについて、緊急已むを得ない場合に限り、逮捕後直ちに裁判官の審査を受けて逮捕状の発行を求めることを条件とし、被疑者の逮捕を認めることは憲法33条規定の趣旨に反するものではない。294頁
児童福祉法違反事件最大判昭31・5・30刑集10-5-756家庭裁判所は憲法の禁止する特別裁判所にはあたらず、司法裁判所を行うべき第一審の通常裁判所として設置されたものである。492頁
謝罪広告事件最大判昭31・7・4民集10-7-785良心の自由と謝罪広告の強制:単に自体の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度のものであれば、間接強制を命じることは許され、屈辱的苦役的労苦を科し、良心の自由を侵害するものとはいえない。
藤田反対意見:「是非弁別の判断に関する事項を外部に表現するの自由ならびに表現せざるの自由」をも憲法によって保障されるので、本判決は違憲である。
116頁
非番巡査犯罪国賠訴訟最二判昭31・11・30民集10-11-1502国家賠償法1条の「職務を行うについて」の意味:客観的に職務遂行の外形を備える行為によって他人に損害を与えた場合にも、国又は公共団体が損害賠償の責任を負う。433頁
刑事補償請求訴訟最大決昭31・12・24刑集10-12-1692勾留の基礎となっていない罪が無罪になったときは、その部分について当然に刑事補償責任を負う。440頁
京成電鉄事件最大判昭32・2・20刑集11-2-802京成電鉄の労働組合員が、人員整理に反対し、威力業務妨害罪、公務執行妨害罪等に問われた事件。
38条1項には「自己に不利益な供述を強要されない」とあるが、氏名は不利益な事項にあたらない。
323頁
チャタレー事件最大判昭32・3・13刑集11-3-997刑法175条猥褻文書頒布被告事件。表現の自由を侵害するものとして上告。
性的秩序を守り、最小限度の性道徳を維持することが公共の福祉の内容であって、無制限に各種人権が認められるわけではない。
170頁
外国人の不法入国事件最大判昭32・6・19刑集11-6-1663憲法22条は外国人が日本へ入国することについての規定ではない。また、国際慣習上、外国人の入国の拒否は国家の自由裁量によって決められる。240頁
第三者所有物没収事件最大判昭32・11・27刑集11-12-3132旧関税法83条は、犯罪のために使われた船舶等を犯人の所有・占有に係る物を没収できる(付加刑:刑法9条)と規定しているが、当該目的物が所有が犯人ではなく第三者に帰属していた場合、第三者の善意・悪意にかかわらず無条件に没収されることが憲法13条・29条に違反すると主張された事件。最高裁は「第三者」を「悪意の第三者」と合憲限定的解釈し、関税法の規定が憲法29条には違反しないと示した。278頁
不法出国・密輸事件最大判昭32・12・25刑集11-14-3377出入国管理令(現・出入国管理及び難民認定法)の規定が憲法22条が保障する外国移住の自由を制限するか否かが争われた。
最高裁は入国審査の手続きは、すべての人の出入国の公正な管理を行うという目的を達成するためのもののであり、合憲性を有すると判示。
21頁
国労旭川支部事件最大判昭32・12・28刑集11-14-3461国鉄(現・JR)労組旭川支部闘争委員長らが、昭和23年7月31日に国鉄職員に争議行為の指令を発令・実行させたため、政令201号に反するとして起訴された。同政令は公布の日(官報号外の印刷は8月2日9:30に完了、発想完了は13:30頃であった)から施行するとなっていたが検察側は、7月31日の日本放送協会(NHK)によるラジオ放送によって国民一般に知りうる状況になったを主張。最高裁はこの点につき、法令の公布は「官報をもってせられるものと解するのが相当」と述べた。473頁
『北海タイムス』事件最大決昭33・2・17刑集12-2-253カメラマンが法廷内で裁判官の制止を無視して被告人の写真を撮影したとして法廷等の秩序維持に関する法律2条1項違反を問われ、過料に処された。Yは特別抗告を行い、当該決定が憲法21条の報道の自由・取材の自由を制限していると主張。最高裁は、以下のように述べて被告人の主張を退けた。
国民は憲法が保障する自由を公共の福祉のために利用する責任を負うので(12条)、制限を受けるのは当然である。取材活動が公判廷における審理を乱し、被告人等の正当な利益を侵害するような行為は許されないものである。刑事訴訟規則215条は写真撮影の許可等を裁判所の裁量に委ね、その許可に従わない限りこれらの行為をすることができないことを明らかにしたものであって憲法に違反するものではない。
182頁
通達課税違憲訴訟最二判昭33・3・28民集12-4-624国税庁長官による通達によりパチンコが「遊戯具」に当たるとして物品税を課された被告人が、課税処分の無効等を求めた事件。通達の内容が正しい解釈に基づいている以上、法律を根拠とした処分であって違憲とならないと判示。 513頁
無償撤去を条件とする建設許可処分最大判昭33・4・9民集12-5-717都市計画に必要な範囲内での建築制限は公共の福祉のためのものである。無償で撤去を定める都市計画法16条は本件広場設定事業の実施上やむをえない制限であった。269頁
練馬事件最大判昭33・5・28刑集12-8-1718自白の証拠能力を唯一の証拠として犯罪事実を肯定できる場合にあっても、それだけでは有罪とされ、刑罰を科されることはない。しかし、共犯者の自白は本人の自白と同一視することはできないため、完全な証明力を持つ。329頁
酒税法施行規則違憲訴訟最大判昭33・7・9刑集12-11-2407再委任の規定をおいても酒税法54条の趣旨に反しない限り合憲である。 477頁
都教組勤評闘争事件最大決昭33・7・29刑集12-12-2776「会議議事録…報告書、メモその他本件に関係ありと思料せられる一切の文書及び物件」と記載した捜索差押許可状は、具体的に列挙されたものであって、それに準じられるような闘争関係の文書を指すことが明らかであるから、明示に欠くということはできない。297頁
旅券発給拒否事件最大判昭33・9・10民集12-13-1969占領下わが国の当面する国際情勢においてはXらがモスクワ(ソ連)で開催される経済会議に参加することは日本国に利益を著しく直接に害する恐れがあるので旅券発給を拒否した外務大臣の処分は違法とはいえない。239頁
東京都売春取締条例違反事件最大判昭33・10・15刑集12-14-3305条例による地域格差を是認114頁
覚せい剤取締法事件最大判昭33・10・15刑集12-14-3313法律の公布の時期は一般の希望者が官報を閲覧し購入しようとすればできた最初の場所(印刷局官報課または東京都官報販売所)に置かれた時点474頁
国有境内地処分法事件最大判昭33・12・24民集12-16-3352沿革上の理由に基づく国有財産関係の整理は憲法89条の趣旨に反するものではない521頁
砂川事件上告審最大判昭34・12・16刑集13-13-3225立川飛行場内の民有地の測量を妨害した労働組合員・学生らが米軍基地内に侵入し、刑事特別法2条違反として起訴された。最高裁は、「安全保障条約は…主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係を持つ高度の政治性を有するものというべきであって」「違憲なりや否やの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、従って、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであ」るとして、憲法9条との関係を回避した。8頁
医業類似行為事件最大判昭35・1・27刑集14-1-33医業類似行為を禁止処罰する規定は人の健康を保持するという公共の福祉上必要な規制であって憲法22条には反しない。244頁
街頭演説事件最一判昭35・3・3刑集14-3-253道路上の演説等には事前に所轄警察署長の許可を要するとした規定は公共の福祉のために必要であって、憲法21条に抵触するものとは認められない。167頁
苫米地訴訟上告審最大判昭35・6・8民集14-7-1206衆議院の解散という極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為について、その法律上の有効無効を審査するところは司法裁判所の権限の外にあると解すべきである。508頁
強制調停違憲決定最大決昭35・7・6民集14-9-1657純然たる訴訟事件が、公開の法廷における対審及び判決で行われないことは憲法82条違反であり、裁判請求権を定めた32条の趣旨を没却させることになる。425頁
東京都公安条例事件最大判昭35・7・20刑集14-9-1243条例によると集団行進をする際には事前に許可を得ることが定められているが、実質的には「届出制」と解釈できる。許可不許可の処分が公安委員会の裁量に属するのは当然であって、濫用の恐れがあるからといって本件条例を違憲とすることはできない。160頁
村会議員出席停止事件最大判昭35・10・19民集14-12-2633裁判所法3条1項の「一切の法律上の争訟」とはあらゆる法律上の係争という意味ではない。議員の出席停止などの問題は自律的な法規範を持つ団体に当たっては内部規律の問題として自治的措置に任せるのが適当である。484頁
碧南市議会議員除名処分取消訴訟最大判昭35・12・7民集14-13-2964任期切れとなった原告に除名処分の取り消すことを争う「訴えの利益」はない。訴えの利益のない訴訟までも憲法32条によって保障されているものではない。424頁
農地交換分合計画事件最大判昭35・12・21民集14-14-3157土地改良法による権利の交換分合は、農業経営の合理化、農業生産力の発展を目的とし、公共の福祉のために実施されるから耕作権のみならず所有権の交換が行われても、憲法29条3項に反するものということはできない。261頁
一番右の「頁」の欄は戸松秀典・初宿正典『憲法判例〔第5版〕』(有斐閣,2007年)のページである。


※課題3
 5月23日提出の課題は昭和35年〜40年の判例を読んでレポートを書くというものである。この課題も3回目となるとずいぶん慣れてきた。今回は18件とかなり少なく、楽であると思われる。
 
灸の適応症・効能記載ビラ事件最大判昭36・2・15刑集15-2-347誇大営利広告禁止の合憲性(21条):国民の保健衛生上の見地から公共の福祉を維持するためやむをえない措置として是認される。181頁
緊急逮捕前の捜索押収事件最大判昭36・6・7刑集15-6-915憲法35条は、35条の場合には令状なしに捜索押収をできるものとしている。緊急逮捕より前に捜索・差押が行われたとはいえ、時間的にはこれに接着し、場所的にも逮捕の現場と同一であるから逮捕の際に逮捕の現場でなされたものというに妨げなく、必要限度の範囲内といえ、違憲違法とする理由はない。298頁
死刑執行方法合憲判決最大判昭36・7・19刑集15-7-1106明治6年太政官布告65号は、廃止され失効したとみることはできず、新憲法下において、法律と同一の効力を有するものとして有効に存続している。死刑の執行方法は、刑法11条、(旧)監獄法71条1項、72条、刑訴法475条から478条までの法律の規定のほか明治6年太政官布告65号が存在しており、憲法31条36条違反はない。288頁
夫婦所得課税違憲訴訟最大判昭36・9・6民集15-8-204724条は、個々具体の法律関係において、常に必ず同一の権利を有すべきものであるという要請を包含するものではない。夫婦別産制が、両性の本質を定めた憲法24条に違反するものではない。519頁
警察法無効訴訟最大判昭37・3・7民集16-3-445警察法は両院において議決を経て適法な手続きによって公布されている以上、裁判所は両院の自主性を尊重しなければならない。市町村警察を廃し、その事務を都道府県警察に移したからといって地方自治の本質に反するものとはいえず、92条に違反する法律ということはできない。454頁
連座違憲訴訟最大判昭37・3・14民集16-3-537連座制の強化は、公職選挙が選挙人の自由に表明せる意思によって公明且つ適正に行われることを確保し、その当選を公明且つ適正なる選挙の結果になすべき注意に出でたるものと買いするを相当とする。…その当選を無効とすることが選挙制度の本旨にもかなう所以である。416頁
自動車事故報告義務事件最大判昭37・5・2刑集16-5-495警察官が交通事故に対する処理をなすことにつき必要な限度においてのみ報告義務を負うにとどまるもので、刑事責任を問われる虞のある事故の原因までも報告するものとは解せられない。324頁
大阪市買春取締条例事件最大判昭37・5・30刑集16-5-577憲法31条はすべての刑罰が法律で定められることを要するのではなく、法律の授権によって下部の法令によって定めることができると解すべきである。白紙委任的なものではあってはならないのは当然である。地方自治法2条3項7号及び1号のように相当な具体的内容につき、14条5項のように限定された刑罰の範囲内において条例で刑罰を科すことができるとしたのは憲法31条の意味において科するものということができる。529頁
第三者所有物没収事件最大判昭37・11・28刑集16-11-1593所有物を没収せられる第三者についても、告知、弁護、防禦の機会を与えることが必要であって、これなくして第三者の所有物を没収することは適正な手続によらないで、財産権を侵害する制裁を科すことになる。関税法118条1項にしたがって第三者の所有物を没収することは憲法31条、29条に違反するものと断ぜざるをえない。279頁
特別区区長公選廃止事件最大判昭38・3・27刑集17-2-121東京都の区は憲法93条2項の「特別区」にはあたらない。525頁
加持祈祷事件最大判昭38・5・15刑集17-4-302信教の自由は絶対無制限のものでなく、公共の福祉のためにこれを利用すべき責任を負う。他人の生命、身体等に危害を及ぼす違法な有形力の行使にあたるものであり、これにより被害者を死に致したものである以上、被告人の行為は反社会的な行為であって、憲法20条1項の信教に自由の保障の限界を逸脱したものである。123頁
ポポロ事件最大判昭38・5・22刑集17-4-370本件集会は、真に学問的な研究と発表のためのものではなく、実社会の政治的社会的活動であり、かつ公開の集会またはこれに準じるものであって、大学の自由と自治は、享有しない。したがって、本件集会に警察官が立ち入ったことは、大学の学問の自由と時事を犯すものではない。237頁
奈良県ため池条例事件最大判昭38・6・26刑集17-5-521ため池の堤とうを使用する財産上の権利の行使を禁止されることになるが、それは災害を未然に防止するという社会生活上のやむをえないものである。このような制限は当然受忍しなければならない責務であって憲法29条3項の損失補償を必要としない。262頁
白タク営業事件最大判昭38・12・4刑集17-12-2434自動車運送事業の免許制は、道路運送事業の適正な運営及び公正な競争を確保するとともに、道路運送に関する秩序を確立することにより道路運送の総合的な発展を図り、持って公共の福祉を増進することに副うものである。246頁
参議院議員定数不均衡訴訟(昭和39年判決)最大判昭39・2・5民集18-2-270島根県:東京都=1:4という投票価値の不均衡を争った訴訟。最高裁は、各選挙区の議員配分は立法府である国会に属する立法政策の問題であって、議員数の配分が選挙人の人口に比例していないという一事だけで憲法14条1項に反し無効と断ずることはできない、と判示した。103頁
教科書代金負担請求訴訟最大判昭39・2・26民集18-2-343義務教育にかかる一切の費用を国が負担するという趣旨ではなく、国の財政事情を考慮して立法政策も問題として解決すべき問題であって、憲法26条2項後段の規定するところではない。376頁
関税法等違反事件最大判昭39・11・18刑集18-9-579憲法14条は直接は日本国民を対象とするものであるが、外国人に対しても類推されるものと解するのが相当である。多面、事実関係上の差異から生ずる不均衡が各人の間にあることは免れ難いところであり、その不均衡が一般社会観念上合理的な根拠に基づき必要と認められる場合には憲法14条の法の下の平等原則に反するものとはいえない。62頁
夫婦同居審判違憲訴訟最大決昭40・6・30民集19-4-1089家事審判法に基づく審判が対審や公開の原則に反するとして争われた事件。当該審判は、夫婦の同居義務の実体的権利義務を確定するものではなく、具体的内容を形成的に決めるものであり、公開・対審によらない家事審判で行っても憲法82条・32条に抵触するものではない。427頁
一番右の「頁」の欄は戸松秀典・初宿正典『憲法判例〔第5版〕』(有斐閣,2007年)のページである。


※課題4
 5月30日提出の課題は昭和40年〜45年の判例を読んでレポートを書くというものである。今回は24件である。
 
起訴猶予処分期待事件最二判昭41・7・1刑集20-6-537被疑者が検察官の言葉を信じ、起訴猶予になることを期待してした自白には任意性に疑いがある。しかし本件においては供述調書以外の証拠によって犯罪事実を認定できるから、原判決を破棄する事由とならない。325頁
全逓東京中郵事件最大判昭41・10・26刑集20-8-901 春闘において、職場を離脱した全逓信労働組合の組合員が郵便法79条1項の郵便物不取扱いの罪にあたるとして起訴された事件。最高裁は、公務員についても、労働基本権の制限は必要やむをえない場合に限られるべきだと判示。国家公務員法そのものとしては、争議行為禁止の違反について刑事制裁はこれを科さないとする趣旨であると解するのが相当である。単なる罷業または怠業等の不作為が存在するにとどまり、暴力の行使その他の不当性を伴わない場合には、刑事制裁の対象とはならないと解するのが相当であるとして、破棄差戻。 385頁
過料決定違憲訴訟最大決昭41・12・27民集20-10-2279非訟事件手続法による過料の裁判は、法律の定める適正な裁判であり、不服申立の手段も補償されていることにかんがみ、公開・対審の原則を認めなかったからといって、憲法82条32条に違反すべきものとする理由はない。428頁
朝日訴訟上告審最大判昭42・5・24民集21-5-1043生活保護法の保護受給権は一身専属的な権利であって、相続の対象とならず、訴訟は終了する。以下「なお、念のために」として蛇足判決。345頁
余罪考慮違憲判決最大判昭42・7・5刑集21-6-748第一審判決は起訴されていない犯罪事実を認定し、これをも実質上処罰するために被告人に重い刑罰を科したものと認めざるを得ない。これは憲法31条に違反するのみならず、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白であるのにこれに刑罰を科した点で憲法38条3項にも違反する。しかし、第二審判決は正統であるので、上告は棄却。286頁
河川附近地制限令違反事件最大判昭43・11・27刑集22-12-1402特別な犠牲を強いるものではないから、補償規定のない河川附近地制限令4条2号の規定が憲法29条3項に違反し、無効であるとはいえない。270頁
三井美唄労組事件最大判昭43・12・4刑集22-13-1425組合員に対し、勧告又は説得の域を超え、立候補をやめることを要求し、これに従わないことを理由に組合員を統制違反者として処分することは、組合の統制権の限界を超えるものとして、違法といわなければならない。382頁
大阪市屋外広告物条例違反事件最大判昭43・12・18刑集22-13-1549ビラ貼り行為は、都市の美観風致を害するものとして規制の対象とされている。都市の美観風致を維持することは公共の福祉を維持する所以であるから、表現の自由に対し、許された必要且つ合理的な制限ということができ、憲法21条に違反するものということはできない。200頁
都教組事件最大判昭44・4・2刑集23-5-305争議行為といっても種々様々なものがあり、地方公務員のする争議行為については民事上の責任を負わせることはあるが、刑事罰を科すことは地方公務員法が認めていないものである。あおり行為等の対象となるべき違法な争議行為はない以上、地方公務員法61条4号が適用される余地はない。Yらのした行為は刑事罰をもってのぞむ違法性を欠くといわざるを得ない。 390頁
全司法仙台事件最大判昭44・4・2刑集23-5-695裁判事務に従事する職員の職務の停廃をきたし、国民生活に重大な障害をもたらすおそれがあるのであって、このような争議行為は違法性が強いものといわなければならない。Y4らの行為も争議行為に通常随伴する行為と認めることができない。388頁
事前運動の禁止違反事件最大判昭44・4・23刑集23-4-235事前運動を禁止しなければ、経費や労力がかさみ、経済力の差による不公平が生ずる結果となり、ひいては選挙の腐敗をも招来するおそれがある。事前運動の禁止は表現の自由に対する必要かつ合理的な制限である。215頁
『夕刊和歌山時事』事件最大判昭44・6・25刑集23-7-975刑法230条の2の規定は人格権としての名誉の保護と憲法21条による正当な言論の保障との調和を図ったものであり、事実が真実でないことの証明がない場合でも真実であると誤審した事につき相当な理由があれば故意が阻却され、名誉毀損罪は成立しないとすべきであり、最高裁の前判例は変更すべきものである。176頁
占領中に受けた被害への補償請求事件最二判昭44・7・4民集23-8-1321サンフランシスコ平和条約による請求権放棄は憲法29条3項のまったく予想しないところであって、国に補償を求めることはできない。273頁
『悪徳の栄え』事件最大判昭44・10・15刑集23-10-1239芸術的・思想的価値のある文書についてもわいせつ性を持つ場合には性秩序に関する秩序及び健全な風俗を維持するため処罰することは国民生活全体の利益に合致し、憲法21条23条に違反するものではない。172頁
博多駅事件最大決昭44・11・26刑集23-11-1490報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値するものといわなければならない。本件フィルムは証拠上重要なものであって、本件裁判が公正に行われるためには、提出命令程度の不利益は、なお受任されるべき程度のものといわなければならない。183頁
物品税法違反事件最大決昭44・12・3刑集23-12-1525不服申立の手段について明文の規定がない場合に刑事訴訟法429条の準用を認めることはできない。行政訴訟により処分の取消を争えるのであるから裁判を受ける権利を保障する憲法32条に反することはないものといわなければならない。431頁
京都府学連事件最大判昭44・12・24刑集23-12-1625警察官が正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは憲法13条の趣旨に反し、許されないものといわなければならない。しかし、本件のように現に犯罪が行われたと認められ、証拠保全のための必要性・緊急性がある場合には裁判官の令状なしに本人の同意なしに警察官による写真撮影が行われることは憲法13条・35条には反しない。48頁
軽犯罪法違反事件最大判昭45・6・17刑集24-6-280思想を外部に発表するための手段だとしても、他人の財産権管理権を不当に侵害する場合には公共の福祉のため制限を受けることは合理的であって憲法21条1項に反するものではない。「みだりに」とは、他人の家屋その他の工作物にはり札をするにつき、社会通念上正当な理由があると認められない場合を指称すると解するのが相当であって、その文言があいまいであるとか、犯罪の構成要件が明確ではないとは認められないから、軽犯罪法1条33号前段の規定が憲法31条に違反することはない。202頁
破産宣告事件最大決昭45・6・24民集24-6-610破産宣告が口頭弁論を開かないでなされたことが憲法82条・32条等に反するとして特別上告。最高裁は、破産宣告は事実を確定し当事者の主張する実体的権利義務の存否を確定することを目的とした純然たる訴訟事件についての裁判ではないと判示した。308頁
八幡製鉄政治献金事件最大判昭45・6・24民集24-6-625政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素であり、健全な発展に協力することは社会実体としても当然期待されるところである。政治資金の寄附は政治的自由の一環であり、自然人たる国民による寄附と別個に扱うべき憲法上の理由があるわけでもない。25頁
国道56号落石訴訟最一判昭45・8・20民集24-9-1268国家賠償法2条1項の営造物の瑕疵とは営造物が通常有すべき安全性を欠いてことをいい、国・地方公共団体の賠償は無過失責任である。本件事故は不可抗力・回避可能性のない場合であったとはいえず、国・県が損害賠償責任を負うのは明らかである。434頁
重加算税と刑罰の併科合憲判決最二判昭45・9・11刑集24-10-1333国税通則法68条の重加算税は行政上の措置であり、違反者の反社会的行為に制裁として科す罰金とは性質を異にするものであるから、重加算税のほかに罰金を科しても憲法39条に違反するものではない。338頁
禁煙処分事件最大判昭45・9・16民集24-10-1410公職選挙法違反の罪で未決拘禁期間中に喫煙を禁止された原告が、精神的苦痛を被ったとして国家賠償法に基づく損害賠償請求をした事件。最高裁は、拘禁の目的と制限される基本的人権の内容、制限の必要性などの関係を総合考慮すると、喫煙禁止という程度の自由の制限は、必要かつ合理的なものであるとし、(旧)監獄法施行規則96条が憲法13条には違反しないものとした。30頁
偽計自白有罪認定違憲判決最大判昭45・11・25刑集24-12-1670取調べの際に罪を認めない被告人Y1と被告人Y2に対し、偽計を使って、共謀したことを認めさせたことの合憲性が問われた事件。最高裁は以下のとおり述べて破棄差戻した。「もしも偽計によって被疑者が心理的強制を受け、その結果虚偽の自白が誘発されるおそれのある場合には、右の自白はその任意性に疑いがあるものとして証拠能力を否定すべきであり、このような自白を証拠に採用することは、刑訴法319条1項の規定に違反し、ひいては憲法38条2項にも違反するものといわなければならない。」331頁
一番右の「頁」の欄は戸松秀典・初宿正典『憲法判例〔第5版〕』(有斐閣,2007年)のページである。


※課題5
 6月6日提出の課題は昭和46年〜50年の判例を読んでレポートを書くというものである。今回は10件である。
個人タクシー事件最一判昭46・10・28民集25-7-1037個人タクシー事業の免許申請の許否を決める手続きについても、行政庁は申請人に対し、基準を適用するうえで必要とされる事項について、その主張と証拠の提出の機会を与えなければならない。289頁
川崎民商事件最大判昭47・11・22刑集26-9-554旧所得税法の所得検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることを一般的要件にしないからといって憲法35条の法意に反するとはいえない。また、検査・質問の性質が憲法38条1項にいう「自己に不利益な供述」を強要するものとはいえない。300頁
小売市場事件最大判昭47・11・22刑集26-9-586大阪府知事の許可を受けないで、所有する建物を48人の小売商に貸し付けたことが小売商業調整特別措置法に反するとして起訴された事件。第一審、第二審とも被告人敗訴。
最高裁は上告棄却。まず、経済活動について社会国家の理念を踏まえて以下のように述べた。「憲法は、個人の自由な経済活動を基調とする経済体制を一応予定しているが、公共の福祉の要請に基づき、その自由に制限が加えられることを当然視するだけでなく、全体として福祉国家的理想のもとに、社会経済の均衡のとれた調和的発展を企図しており、経済的劣位に立つものに対する適切な保護政策を要請している。こうして憲法は、国の責務として積極的な社会経済政策の実施を予定しており、個人の経済活動の自由に関する限り、個人の精神的自由等に関する場合と異なって、右社会経済政策の実施の一手段として、これに一定の合理的規制措置を講ずることは、もともと憲法が予定し、許容するところである。」次に、経済的自由に対する規制立法について次のような具体的な憲法判断規準を述べた。
「社会経済分野において、法的規制措置を講ずる必要があるかどうか、その必要があるとしても、どのような手段・大要の規制措置が適当妥当であるかは、主として立法政策の問題として、立法府の裁量的判断にまつほかはない。裁判所は、立法府の右裁量的判断を尊重するのを建前とし、ただ立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限って、これを違憲とすることができる。」
そして、本件「小売市場の許可規制は、国が社会経済政策の調和的発展を企図するという観点から中小企業保護政策の一方策としてとった措置」であり、目的において一応の合理性が認められ、「その規制の手段・態様においても、それが著しく不合理であることが明白であるとは認められない。」よって、小売市場の許可規制は憲法22条1項に違反しない。
247頁
尊属殺人事件最大判昭48・4・4刑集27-3-265実父の子供を5人も生まされた被告人は職場で知り合った男性と結婚を考えるようになった。これを父に話したところ、怒り狂い10日余り脅迫虐待されたので、これから逃れようとして昭和43年10月5日夜、父を絞殺した。第一審は刑法200条を違憲とし、刑を免除。控訴審は200条を合憲とし、過剰防衛を否定。心神耗弱による減軽・酌量減軽により3年6月の実刑を宣告。最高裁は破棄自判し、刑法200条が憲法14条1項に違反するとした。その理由は刑法200条が199条に比べて著しく不合理な差別的取扱いをしているからである。87頁
全農林警職法事件最大判昭48・4・25刑集27-4-547全農林労組の幹部が国家公務員法98条5項(現行2項)の違法な争議のあおり行為に該当するとして起訴された。違法な争議行為をあおることは公共の利益のために勤務する公務員の重大な義務の懈怠一面を持つものであり、国民全体の共同利益に重大な障害をもたらすおそれがあるものであり、憲法の保障する言論の自通の限界を逸脱するものである。よって、国公法110条1項17号は憲法21条に違反するとはいえない。392頁
三菱樹脂事件最大判昭48・12・12民集27-11-1536企業者は経済活動の自由の一環として契約自由を有し、いかなる者を雇うか、いかなる条件で雇うかについて原則として自由に決めることができる。思想、信条を理由とする雇い入れ許否を直ちに不法行為とすることはできず、公序良俗違反とする解すべき根拠もない。34頁
昭和女子大学事件最三判昭49・7・19民集28-5-790大学はその設置目的を達成するために必要事項を学則等によって一方的に制定し、これによって在学する学生を規律する包括的権能を有するものと解すべきである。Xらの行為(政暴法反対の署名を学内で集めたこと、無許可で政治団体に加入申請中であったこと)を「学内の秩序を乱し、その他学生として本文に反した」ものとして認めた判断は、社会通念上合理性を欠くものとはいいがたい。本件退学処分は懲戒者に認められた裁量権の範囲内にあるとして効力を是認すべきである。37頁
猿払事件上告審最大判昭49・11・6刑集28-9-393公務員の政治的中立性を損なうおそれが多く、違法性の強い行為に対して国公法の定める程度の刑罰を法定したとしても、決して不合理とは言えず、憲法31条に反するものとはいうことができない。210頁
薬事法違憲訴訟最大判昭50・4・30民集29-4-572薬局開設に関する許可制自体は合理的措置として是認することができる。薬局の開設につき、競争の激化−経営の不安定−法規違反という因果関係に立つ不良医薬品の供給の危険が、発生する可能性があるとすることは単なる観念上の想定に過ぎず、確実な根拠に基づく合理的な判断とはいえない。よって、「薬事法6条2項4項は不良薬品の供給の防止等の目的のために必要かつ合理的な規制を定めたということができないから、憲法22条1項に違反し、無効である。」251頁
徳島市公安条例事件最大判昭50・9・10刑集29-8-489「交通秩序を維持すること」とは道路における集団行動等が一般に秩序正しく平穏に行われる場合これに随伴する交通秩序阻害の程度を超えた、殊更な交通秩序の阻害をもたらすような行為を阻止すべきことを命じていると解される。確かに文言が抽象的であるというそしりを免れないとはいえ、集団行動等における道路交通の秩序遵守についての基準を読み取ることは可能であり、犯罪構成要素の内容をなすものとして明確性を欠き憲法31条に違反するものとはいえない。162,283頁



※課題6
 6月13日提出の課題は昭和51年〜55年の判例を読んでレポートを書くというものである。今回の対象判例は17件である。
衆議院議員定数不均衡訴訟(昭和51年判決)最大判昭51・4・14民集30-3-223昭和47年12月10に行われた衆議院選挙の無効を請求した事件。各選挙区間の議員一人当たりの有権者分布比率は最大で「4.99対1」となっていた。最高裁は、この開きを「一般的に合理性を有するものとはとうてい考えられない程度に達している」とし、「憲法の選挙権の平等の要求に反する程度になっていた」と示した。また、昭和39年の公職選挙法改正から本件選挙までに8年が経過していることを指摘し、「憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったもの」と認めた。そして、千葉県1区のみで無効となるのではなく、「全体として違憲の瑕疵を帯びるもの」とした。
しかしながら、本件処分が違法であっても、取り消すことが公共の福祉に反する場合には取り消さないことができるものとする事情判決の法理を適用し、選挙自体は無効とはしなかった。行政事件訴訟法31条1項前段を適当することはできないので(公選法219条)、法の基本原則として適用したのである。結局、「選挙を無効とする旨の判決を求める請求を棄却するとともに、当該選挙が違法である旨を主文で宣言」した。もっとも、本判決は昭和50年改正前の衆議院議員選挙における議員定数配分規定を違憲としたにとどまり、判決が出たときには公選法は改正されていた。
93頁
旭川学力テスト事件最大判昭51・5・21刑集30-5-615建造物侵入、暴力行為等処罰に関する法律違反被告事件。被告人らは旭川市立永山中学校で実施予定の学力テストを阻止する目的で、校内に侵入、職員や校長に暴力・脅迫を加えた。
教育権の所在等が争われたが、最高裁は、権限を行使したテスト実施行為は違法とならず、「教育における地方自治の原則に反する違法があることはできない」と判断した。
369頁
岩手県教組学力テスト事件最大判昭51・5・21刑集30-5-1178地方公務員法違反、道路交通法違反被告事件。道路交通法違反については「憲法28条の争議権の正当な行使として違法性が阻却され」ないとした。地方公務員法61条4号の罰則についても都教組事件の判断枠組みを変更し、あおり行為について可罰性を有しないものとして処罰除外を認めなかった。395頁
全逓名古屋中事件最大判昭52・5・4刑集31-3-182郵便法違反幇助、建造物侵入、公務執行妨害被告事件。公務員の争議行為を全面的に禁止する公労法17条1項は、不当な措置であるとはいえない。また、争議行為が刑法上の違法性を阻却するものであるという趣旨であると解することに合理性はない。397頁
津地鎮祭事件上告審最大判昭52・7・13民集31-4-533行政処分等請求事件。津市の体育館起工にあたり、津市は地鎮祭を行い、その費用7,663円を公金から支出した。ある市議会議員が地方自治法242条の2に基づいて、市長への損害補填を請求、また起工式の強制参加による精神的損害に対する慰謝料を求めた。第一審(津地判昭42・3・16判時483号28頁)は本件起工式の世俗的なもので、宗教的な活動ではないとし、X敗訴。控訴審(名古屋高判昭46・5・14行集22巻5号680頁)では「本件地鎮祭が特定宗教による宗教上の儀式であると同時に、憲法20条3項で禁止する『宗教的活動』に該当する」として、Xの請求を一部認容した。
最高裁は、国およびその機関の宗教的活動は、相当のとされる限度を超えない程度において是認されるとし、ある行為が宗教活動に該当するかどうかは、「当該行為の主宰者が宗教家であるかどうか、その順序作法が宗教の定める方式に則ったものであるかどうかなど、当該行為の外面的側面にのみにとらわれることなく、当該行為の行われる場所、当該行為に対する一般人の宗教的評価、当該行為者が当該行為を行うについての意図、目的および宗教的意識の有無、程度、当該好意の一般人に与える効果、影響等、諸般の事情を考慮し、社会通念に従って、客観的に判断しなければならない」といういわゆる「目的効果論」を示し、当該行為を合憲とした。
138頁
狭山事件最二決昭52・8・9刑集31-5-821強盗強姦、強盗殺人、恐喝未遂、窃盗、森林窃盗、傷害、暴行、横領被告事件。別件逮捕・拘留、再逮捕・拘留によって収集された証拠の証拠能力の合憲性が争われた。最高裁は「『別件』の捜査と本件とは社会的事実として一連の密接の関連性があり、…別件についてしなければならない取調べをしたものに他ならない。」として上告を棄却した。295頁
外務省機密漏洩事件最一決昭53・5・31刑集32-3-457毎日新聞の記者が国家公務員法111条に規定する秘密漏示行為の「そそのかし」罪違反として起訴された事件。報道機関といえ、取材の手段が一般の刑罰法規に触れないものであっても、取材対象者の後塵としての人格の尊厳を著しく蹂躪する等法津秩序全体の精神に照らし社会観念上是認することのできない態様のものである場合には正当な取材活動の範囲を逸脱し、違法となる。本件について、「当初から機密文書を入手するための手段として利用する意図でY2と肉体関係を持ち、同女が右関係のためY1の依頼を拒みがたい心理状態に陥ったことに乗じて機密文書を持ち出させたが、同女を利用する必要がなくなるや、同女との右関係を消滅させてその後は同女を顧みなくなったものであって、取材対象者であるY2の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躪したものといわざるをえず、このようなY1の取材行為は、その手段・方法において法秩序全体の精神に照らし社会通念上、到底是認することのできない不相当なものであるから、正当な取材活動の範囲を逸脱している」とし、Y1の上告を棄却した。187頁
バッグ所持品検査事件最三判昭53・6・20刑集32-4-670爆発物取締罰則違反、殺人未遂、強盗被告事件。所持人の承諾がない限り所持品検査が一切許されないものではなく、捜索に至らない程度の行為は強制にわたらない限り、許される場合がある。本件は、所持品検査の緊急性、必要性が強かった反面、所持品検査の態様は携行中の所持品バッグの施錠されていないチャックを開披し内容を一べつしたにすぎず、これによる法益侵害はさほど大きくなく、相当の範囲内であり、警職法2条1項の職務質問に付随する行為として是認できる。301頁
事後法による財産権の内容変更事件最大判昭53・7・12民集32-5-946国有財産買受申込拒否処分取消請求事件。「法律でいったん定められた財産権の内容を事後の法律で変更しても、それが公共の福祉に適合するようにされたものであるかぎり」違憲とはならない。264頁
ポケット所持品検査事件最一判昭53・9・7刑集32-6-1672覚せい剤取締法違反被告事件。被告人の承諾なしに上衣左側内ポケットに手を差し入れて所持品を取り出して検査した巡査の行為はプライバシー侵害の高い行為であり相当な行為とは認めがたい。本件違法証拠物の押収手続の違法は必ずしも重大であるとはいえないので、被告人の罪証に供することが、違法な捜査の抑制の見地に立ってみても相当ではないとは認めがたいから、証拠物の証拠能力は肯定するべきである。302頁
マクリーン事件最大判昭53・10・4民集32-7-1223在留期間更新不許可処分取消請求事件。米国籍のマクリーン訪日後、英語の教師として就職したが、無届で職場を変わった。ベトナム反戦、出入国法案反対、日米安保条約反対などのデモや集会に参加した。1年間の在留期間の更新をしたが、法務大臣は更新を許可しなかった。
外国人にも一部を除き、憲法の人権規定は及ぶが、在留の拒否を決する国の裁量を拘束するまでの保障はない。
23頁
参与判事補制度違憲訴訟最二決昭54・6・13刑集33-4-348傷害被告事件。参与判事補は形式的にも実質的にも裁判体の構成員となるものではなく、2人合議制を取ったものではない。494頁
4.28沖縄デー闘争事件最三判昭54・7・24刑集33-5-416兇器準備集合、威力業務妨害、公務執行妨害被告事件。被告人による国選弁護人の再選任請求は、誠実な権利の行使とは程遠いものであり、裁判所にはこれに応じる義務はない。被告人が権利濫用しているため、再選人請求を却下した第一審の判断は正当である。したがって、憲法37条3項に違反するものではない。318頁
写真集輸入税関検査事件最三判昭54・12・25民集33-7-753異議申出棄却決定取消請求事件。本件通知は「観念の通知であるとはいうものの、もともと法律の規定に準拠してされたものであり、かつこれによりXに対し申告にかかる本件貨物を適法に輸入することができなくなるという法律上の効果を及ぼすものというべきであるから、行政事件訴訟法3条2項にいう『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為』に該当するもの、と解するのが相当である。」228頁
峯山事件最一判昭55・2・7刑集34-2-151・2審あわせて25年の年月を費やした私文書偽造、背任、恐喝被告事件。特に第一審では検察官の申出によって5年間審理が中断されている。憲法37条1項の保障などに違反するとして上告。本件の第1・2審の訴訟の進め方には批判を免れない点があるが、遅延の結果異常な事態を生じているとまではいえないから、審理を打ち切るのは適当ではない。312頁
『四畳半襖の下張』事件最三判昭55・11・28刑集34-6-433「男女の性的交渉の情景を扇情的な筆致で露骨、詳細かつ具体的に描写した部分が量的質的に文書の中枢を占めており、その構成や展開、さらには文芸的、思想的価値など考慮に容れても、主として読者の好色的興味に訴えるものと認められるから、以上の諸点を総合検討したうえ、本件文書が刑法175条にいう『わいせつ文書』にあたると認めた原判断は、正当である。」174頁
全逓プラカード事件最三判昭55・12・23民集34-7-959懲戒処分取消請求事件。メーデーにおける集団行進が、国家公務員法規則5項4号、6項13号に該当し、国公法102条1項に違反する。郵政職員が、労働組合活動の一環として上記法規に違反する政治的行為を行ったとしても、国公法82条の規定による懲戒処分の対象とされることを免れない。213頁


※課題7
日産自動車事件最三判昭56・3・24民集35-2-300男女別定年制を定める就業規則が民法90条に違反するかが問われた雇用関係存続確認等請求事件。企業経営上の観点から定年年齢において女子を差別しなけれならない合理的理由は認められないと判断とした原判決は正当である。38頁
「板まんだら」訴訟最三判昭56・4・7民集35-3-443創価学会員による寄付金返還請求事件。「板まんだら」が偽物か本物か、広宣流布が達成されたか等、宗教上の教義に関する判断が必要であり、その性質上法令を適用することによっては解決できない問題である。実質において法令の適用による終局的な解決の不可能なものであり、裁判所法3条にいう法律上の争訟にはあたらない。482頁
前科照会事件最三判昭56・4・14民集35-3-620自動車学校の弁護士がある技術指導員の前科を京都市の区役所に照会し、道交法違反、業務上過失傷害等の前科歴がある旨の回答を得た。指導員が京都市に対して名誉・信用・プライバシー侵害を理由に損害賠償請求を提訴。前科等はこれをみだり公開されない法律上保護に値する利益を有する。市区町村長が、漫然と弁護士会の照会に応じ、犯罪の種類、軽重を問わず、前科等のすべてを報告することは、公権力の違法な行使に当たると解する。47頁
『月刊ペン』事件最一判昭56・4・16刑集35-3-84月刊ペン社は創価学会の池田会長を批判する特集記事を出版した。会長について、女性関係において病的であり色情的でさえある、「お手付き情婦として、2人とも公明党議員として国会に送りこんだというT子とM子」などと執筆したことが3人の名誉を毀損したとして起訴された。私人の私生活上の行状であっても、その社会活動の性質、社会に及ぼす影響力の程度などのいかんによっては、その社会的活動に対する批判ないし評価の一資料として、刑法230条の2第一項にいう「公共の福祉に関する事実」にあたる場合がある。これに当たるか否かは、摘示された事実事態の内容・性質に照らして客観的に判断されるべきである。177頁
戸別訪問の禁止違反事件(3)最二判昭56・6・15刑集35-4-205松江地出雲支判昭54・1・24判時923号141頁及び広島高松江支判昭55・4・28は公選法138条1項に定める戸別訪問禁止規定を憲法21条に反すると判示したため、検察官が上告。戸別訪問の禁止は、意見表明そのものの制約を目的とするものでなく、意見表明の手段方法のもたらす弊害すなわち、戸別訪問が買収、利害誘導等の温床になりやすく、選挙人の生活の平穏を害するほか、これが放任されれば、候補者側も訪問回数等を競う煩に耐えられなくなるうえに、多額の出費を余儀なくされ、投票も情実に支配されやすくなるなどの弊害を防止し、もって選挙の自由と公平さを確保することを目的としている。この目的は正当であり、戸別訪問を一律に禁止することと禁止目的との間に合理的な関連性があるということができる。221頁
大阪空港公害訴訟最大判昭56・12・16民集35-10-1369航空機の離着陸差止請求は、行政訴訟の方法により何らかの請求をすることができるかどうかはともかく、いわゆる通常の民事上の請求として司法上の給付請求権を有するとの主張の成立するいわれはない。よって、差止めを求める請求にかかる部分は不適法というべきである。54頁
堀木訴訟上告審最大判昭57・7・7民集36-7-1235需給認定却下処分に対する取消請求事件。児童扶養手当法の併給調整規定が、憲法13条、14条1項、25条2項に違反するとして上告。憲法25条の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの政策決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事項であるといわなければならない。それが低額であるからといって、当然に憲法25条違反に結びつくというものではない。350頁
郵便貯金目減り訴訟最一判昭57・7・15判時1053-93政府の経済政策は事の性質上専ら政府の裁量的な政策判断に委ねられている事項とみるべきものであって、仮に政府においてのその判断を誤り、ないしはその措置に適切を欠いたため、目標を達成できず、またはこれに反する結果を招いたとしても、これについて政府の政治責任が問われることがあるのは格別、法律上の義務ないし違法行為として国家賠償法上の損害賠償責任の問題を生ずるものとすることはできない。507頁
エンタープライズ寄港阻止佐世保闘争事件最三判昭57・11・16刑集36-11-908道路交通法違反、公務執行妨害等被告事件。道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資する目的のもとに、道路における集団行進に対し、あらかじめ所轄警察署長の許可を受けさせる程度の規制をする道路交通法77条1項4号、長崎県道交法施行規則15条3号の各規定が、表現の自由に対する公共の福祉による必要かつ合理的な制限として憲法上是認されるべきものであることは、判例の趣旨に照らし明らかなところである。166頁
参議院議員定数不均衡訴訟(昭和58年判決)最大判昭58・4・27民集37-3-345昭和52年7月10日施行の参議院選挙における選挙無効請求事件。人口比率は最大1対5.26の格差。参議院は都道府県選出という機能を有し、人口比例主義を基本とする選挙制度と比較して、一定の譲歩、後退を免れない。参議院地方選出議員について、選挙区割りや議員定数の配分を長期にわたって固定し、国民の利害や意見を安定的に国会に反映させる機能を持たせることは立法政策として許容される。違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じていたとは足らないものとする。104頁
よど号ハイジャック記事黒塗り事件最大判昭58・6・22民集37-5-793国際反戦デー闘争などに参加した被告人は東京拘置所に勾留中、赤軍学生による「よど号」乗っ取り事件に関する記事を墨で黒く塗られて新聞を配布された。憲法21条知る権利を侵害されたとして、国に対して損害賠償請求。監獄内の規律および秩序の維持のために必要とされる場合には新聞の閲覧は制限される場合がある。閲覧を許すことで規律や秩序上放置することのできない程度の損害が生じる相当の蓋然性が認められることが必要であり、その場合においても規制の範囲は必要かつ合理的な範囲にとどめるべきである。法務大臣訓令および法務省強制局長依命通達は上記範囲内においての閲覧の制限を許す旨を定めたものと解することができるので、憲法に違反するものではない。193頁
衆議院議員定数不均衡訴訟(昭和58年判決)最大判昭58・11・7民集37-9-1243昭和55年6月22日実施の衆議院議員選挙(大平内閣・衆参ダブル選)についての選挙無効確認請求事件。最大1対3.94の格差について、原審は憲法14条違反としたが、事情判決の法理に従い、選挙無効請求は棄却された。最高裁は、違憲状態にあるとしつつも、50年の公選法改正によりこの状態が一応、解消されたものであり、憲法上要求される合理的期間内に是正がなされなかったとはいえないとし、憲法に違反するとは断言しなかった。しかしながら、50年公選法について、「できる限り速やかに改正されることが強く望まれる」と、国会に対して異例ともいえる注文をつけた。96頁
札幌税関事件最大判昭59・12・12民集38-12-1308輸入禁制品該当通知処分等取消請求事件。輸入が禁止される表現物は、国外において出版済みのものであるので、発表の機会が全面的に奪われるわけではないから、税関検査は事前抑制そのものではない。関税定率法21条1項3号にいう「風俗を害すべき書籍、図画」等の規定を合理的に解釈すれば、「風俗」とはもっぱら性風俗を意味し、輸入を禁止されるのは、卑猥な書籍、図画等にに限られるから、当該規定は何ら明確性に欠けるものではなく、憲法21条1項に違反しない合憲的なものというべきである。230頁
吉祥寺駅構内ビラ配布事件最三判昭59・12・18刑集38-12-3026鉄道営業法違反、建造物侵入被告事件。憲法21条1項は表現の自由を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであって、たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の財産権、管理権を不当に害するごときものは許されないから、本件各所為につき、鉄道営業法35条および刑法130条後段の各規定を適用してこれを処罰しても憲法21条1項に違反するものではない。204頁
サラリーマン税金訴訟最大判昭60・3・27民集39-2-247同志社大学教授による所得税処分決定取消請求事件。租税法規に対しては基本的に立法府の裁量的判断を尊重せざるを得ないものというべきである。給与所得者に対して必要経費の実額控除を認めていないことについては、相当性を欠くことが明らかであるということはできない。80頁
衆議院議員定数不均衡訴訟(昭和69年判決)最大判昭60・7・17民集39-5-1100昭和58年12月18日施行の衆議院議員選挙における不均衡は最大1対4.40に及んでいた。原審はいずれもいわゆる事情判決であった。不平等が国会の裁量権の行使として合理性を是認しうるかにつき、違憲に達したときから本件選挙までに較差の是正がなされなかったことが合理的期間内の是正が行われなかったとされた。ただし、主文において選挙の違法を宣言するにとどめ、選挙は無効としないとするいわゆる事情判決の法理が用いられた。99頁
帝銀事件最一決昭60・7・19判時1158-28昭和30年5月7日にYの死刑が確定。その後再審請求と恩赦請求などもあり、30年間死刑が執行されずに昭和60年となった。Yの訴訟代理人が刑法32条1号の定める死刑の時効が完成したとして、人身保護法2条3条に基づきYの釈放請求をした人身保護請求事件。最高裁は、「死刑の確定判決を受けた者が監獄に継続して拘置されている場合は死刑の時効は進行しないとした原審の判断は正当」として一部棄却、一部却下。なお、Yは本決定後の昭和62年5月10日、八王子医療刑務所で死亡した。334頁
福岡市青少年保護育成条例事件最大判昭60・10・23刑集39-6-413被告人は、16歳の女子高校生とホテルや車内で十数回にわたって性交したとして福岡県青少年保護育成条例10条(「何人も、青少年に対し、淫行又はわいせつの行為をしてはならない」)違反に問われた。第一審(小倉簡判昭56・12・14刑週39巻6号461頁)は罰金5万円を科し、二審(福岡高判昭57・3・29刑集39巻6号463頁)もこれを支持した。
本条例10条1項にいう「淫行」とは、広く青少年に対する性交一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。処罰の範囲が不当に広すぎるとも不明確であるともいえないから、本件規定が憲法31条の規定に違反するものとはいえず、憲法11条、13条、19条、21条違反をいう所論も前提を欠くに帰し、すべて採用することはできない。
281頁
在宅投票制廃止違憲訴訟上告審最一判昭60・11・21民集39-7-1512国会議員は立法に関しては政治的責任を負うにとどまり、容易に想定しがたいような例外的な場合に限り、国会賠償法1条1項の違法の評価を受けない。投票方法その他両議院の選挙に関する事項は、国会の裁量権限に任せる趣旨であることは判例とするところである。406頁



※課題8
 6月27日提出の課題は昭和61年〜平成2年の判例を読んでレポートを書くというものである。今回の対象判例は17件である。
『北方ジャーナル』事件最大判昭61・6・11民集40-4-872仮処分による事前差止めは、表現物の内容の網羅的一般的な審査に基づく事前規制が行政機関によりそれ自体を目的として行われる場合とは異なり、個別的な私人間の紛争について、司法裁判所により当事者の申請に基づき差止請求権等の私法上の被保全債権の存否、保全の必要性の有無を審理判断して発せられるものであって検閲にはあたらない。出版物頒布等の事前差止めは、事前抑制に該当し、その対象が公務員又は公職選挙の立候補者に対する評価、批判等の表現活動に関するものであるときは、事前差止めは原則として許されないものといわなければならない。しかし、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的でないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な被害を被る虞があるときは、当該表現活動はその価値が被害者の名誉に劣後することが明らかであるうえ、有効適切な救済方法としての差止めの必要性も肯定されるから、かかる実体的要件を具備するときに限って、例外的に事前差止めが許される。179頁
森林法共有林事件最大判昭62・4・22民集41-3-408共有物分割請求事件。森林法186条「森林の共有者は、民法…256条1項の規定にかかわらず、その共有に係る森林の分割を請求することはできない。ただし、各共有者の持分の価額に従いその過半数をもって分割の請求をすることを妨げない。」の合憲性が争われた。
財産権に対して加えられる規制が憲法29条2項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは、規定の目的、必要性、内容、その規制によって制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して決すべきものである。裁判所としては立法府がした判断を尊重すべきものであるから、立法の規制目的が公共の福祉に合致しないことが明らかであるか、又は規制目的が公共の福祉に合致するものであっても規制手段が右目的を達成するための手段として必要性若しくは合理性に欠けていることが明らかであって、そのため立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えるものとなる場合に限り、当該立法が憲法29条2項に違背するものとしてその効力を否定することができる。当該規制の目的は、森林の細分化を防止することによって森林経営の安定を図り、ひいては森林の保続培養と森林の生産力の増進を図り、もって国民経済の発展に資することにあると解すべきであり、同胞186条の立法目的は、公共の福祉に合致しないことが明らかであるとはいえない。森林法186条が共有森林につき持分価額2分の1以下の共有者に分割請求権を否定しているのは、立法目的との関係において、合理性と必要性のいずれをも肯定することのできないことが明らかであって、立法府の判断は、その合理的裁量の範囲を超えるものであるといわなければならない。
259頁
サンケイ新聞意見広告事件最二判昭62・4・24民集41-3-490サンケイ新聞(現・産経新聞)は昭和48年12月2日、「前略 日本共産党殿 はっきりさせてください」という見出しの自民党の意見広告を掲載した。日本共産党は、反論意見広告の無料掲載を要求したが、サンケイ新聞に断られたため、名誉既存のほか、反駁権、反論権の存在を主張し提訴。
最高裁は以下のように述べて、共産党の上告を棄却した。「反論権の制度は民主主義社会においてきわめて重要な意味をもつ新聞等の表現の自由」「に対し重大な影響を及ぼすものであって、たとえ被上告人の発行するサンケイ新聞などの日刊全国紙による情報の提供が一般国民に対し強い影響力を及ぼすことがあるとしても、不法行為が成立する場合にその者の保護を図ることは別論として、反論権の制度について具体的な成文法がないのに、反論権を認めるに等しい上告人主張のような反論文掲載請求権をたやすく認めることはできない。」
195頁
労働者の政党所属調査事件最二判昭63・2・5労判512-12Xに対して共産党員であるか否かを尋ねたことは、その必要性、合理性を肯認することができないわけでもなく、本件質問の様態は返答を強要するものではなかったというものであるから、本件質問は、社会的に許容しうる限界を超えて上告人の精神的自由を侵害した違法行為であるとはいえない。117頁
自衛官合祀訴訟最大判昭63・6・1民集42-5-277自衛官らによる合祀手続の取消等請求事件。人が自己の信仰生活の静謐を他者の宗教上の行為によって害されたとし、そのことに不快の感情を持ち、そのようなことがないよう望むことのあるのは、その心情として当然であるとしても、かかる宗教上の感情を被侵害利益として、直ちに損害賠償を請求し、又は差止めを請求するなどの法的救済を求めることができるとするならば、かえって相手方の信教の自由を妨げる結果となるに至ることは、見易いところである。…原審が宗教上の人格権であるとする静謐な宗教的環境の下で信仰生活を送るべき利益なるものは、これを直ちに法的利益として認めることができない性質のものである。125頁
共産党袴田事件最三判昭63・12・20判時1307-113家屋明渡等請求事件。政党に対しては、高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営をなしうる自由を保障しなければならない。政党の内部的自律権に属する行為は、法律の特別の定めのない限り尊重すべきであるから、政党が組織内の自律的運営として党員に対してした除名その他の処分の当否については、原則として自主的な解決にゆだねるのを相当とし、政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審査権は及ばない。485頁
地方公務員自動失職制違憲訴訟最三判平元・1・17判時1303-139禁固以上の刑に処せられたものが公務につけないとする地公法28条4項、16条2号は、公務に対する住民の信頼を確保することを目的としているのであるところ、社会的感覚などに照らせば、目的には合理性があり、地方公務員を法律上このような制度が設けられていない私企業労働者に比べて、不当に差別したものとはいえず、憲法14条1項、13条に違反するものではない。83頁
公衆浴場事件最三判平元・3・7判時1308-111公衆浴場法2条2項の適正配置規制の目的は、国民保険及び環境衛生の確保にあるとともに、公衆浴場が自家風呂を持たない国民にとって日常生活上必要不可欠な厚生施設であり、既存公衆浴場業者の経営の安定を図ることにより、自家風呂を持たない国民にとって必要不可欠な厚生施設である公衆浴場自体を確保することも、その目的としていると解せられるのであって、公衆浴場法2条2項及び大阪府公衆浴場法施行条例2条の規定は憲法22条1項に違反しない。250頁
レペタ法廷メモ訴訟最大判平元・3・8民集43-2-89メモ採取不許可国家賠償請求事件。傍聴人が法廷において、メモを取ることは、その見聞する裁判を認識、記憶するためになされるものである限り、尊重に値し、故なく妨げられてはならない。本件裁判長が法廷警察権に基づき傍聴人に対してあらかじめ一般的にメモをとることを禁止した上、上告人に対しこれを許可しなかった措置はこれを妥当なものとして積極的に是認し得る事由を見出すことはできない。裁判所としては、今日においては、傍聴人のメモに関し配慮を欠くに至っていることを率直に認め、今後は傍聴人のメモをとる行為に対して配慮をすることが要請されることを認めなければならない。…本件措置には特段の事情があるとまではいえないから、本件措置が配慮を欠いていたことが認められるにもかかわらず、これが国家賠償法1条1項の規定にいう違法な公権力の行使に当たるとまでは、断ずることはできない。197頁
百里基地訴訟上告審最三判平元・6・20民集43-6-385本件売買契約は、国が行った行為ではあるが、私人と対等の立場で行った私法上の行為であり、憲法98条1項にいう「国務に関するその他の行為」には該当しないというべきものである。…本家売買契約が締結された昭和32年当時、司法的な価値秩序のもとにおいては、自衛隊のために国と私人との間で、売買契約その他の私法上の契約を締結することは、社会的に許容されない反社会的な行為であるとの認識が、社会の一般的な観念として確立していたということはできない。したがって、自衛隊の基地建設を目的ないし動機として締結された本件契約が、その私法上の契約としての効力を否定されるような行為であったとはいえない。16頁
岐阜県青少年保護育成条例事件最三判平元・9・19刑集43-8-785有害図書の指定が憲法21条2項前段の検閲に当たらないことは当裁判所の各大法廷判例の趣旨に徴し明らかである。…有害図書の自動販売機への収納の禁止は、青少年に対する関係において、憲法21条1項に違反しないことはもとより、成人に対する関係においても、有害図書の流通を幾分制約することにはなるものの、青少年の健全な育成を阻害する有害環境を浄化するための規制に伴う必要やむをえない制約であるから、憲法21条1項に違反するものではない。225頁
天皇への不当利得請求権事件最二判平元・11・20民集43-10-1160住民訴訟による損害賠償請求事件。天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることをかんがみ、天皇には民事裁判権は及ばないと解するのが相当である。4頁
自己消費目的の酒類製造事件最一判平元・12・14刑集43-13-841自己消費目的の酒類製造の自由が制約されるとしても、そのような規制が立法府の裁量を逸脱し、著しく不合理であることが明白であるとはいえず、憲法31条、13条に違反するものではない。41頁
千葉県議会議員選挙事件最一判平元・12・18民集43-12-2139本件選挙当時において、投票価値の不平等(1対3.98)は、千葉県議会において地域間の均衡を図るため通常考慮しうる諸般の要素をしんしゃくしてもなお、一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達していたとはいえず、同議会に与えられた裁量権の合理的な行使として是認することができる。111頁
政見放送削除事件最三判平2・4・17民集44-3-547言動が放送されることによる弊害を防止する目的で政見放送の品位を損なう言動を禁止したものであるから、公職選挙法150条の2に違反する言動がそのまま放送されなかったとしても、不法行為上、法的利益の侵害があったとはいえないと解すべきである。被上告人に本放送協会は、行政機関ではなく、自治省行政局選挙部長に対してその見解を照会したとはいえ、自らの判断で本件削除部分の音声を削除してテレビジョン放送したのであるから、右措置が憲法21条2項前段にいう検閲に当たらないことは明らかであり、右措置が検閲に当たらないとした原審の判断は、結論において是認することができる。232頁
TBS事件最二決平2・7・9刑集44-5-421本件差押により申立人を始め報道機関において、将来本件と同様の方法により取材することが仮に困難になるとしても、その不利益はさして考慮に値しない。このような事情を総合すると、本件差押は、適正迅速な捜査の遂行のため、やむをえないものであり、申立人の受ける不利益は、受忍すべきものというべきである。185頁
破防法違反事件最二判平2・9・28刑集44-6-463表現活動といえども、絶対無制限に許容されるものではなく、公共の福祉に反し、表現の自由の限界を逸脱するときには、制限を受けるのはやむをえないところ、右のようなせん動は、公共の安全を脅かす現住建造物等放火罪、騒擾罪等の重大犯罪を引き起こす可能性のある社会的に危険な行為であるから、公共の福祉に反し、表現の自由の保護を受けるに値しないものとして、制限を受けるのはやむを得ないものというべきであり、右のようなせん動を処罰することが憲法21条1項に違反するものではないことは、当裁判所大法廷の判例の趣旨に徴し明らかであり、所論は理由がない。169頁



※課題9
 7月4日提出の課題は平成3年〜平成7年の判例13件である。
「バイク三ない原則」事件最三判平3・9・3判時1401-56私立学校である被上告人設置に係る高等学校の本体校則及び上告人が本件校則に違反したことを理由の一つとしてされた本件自主退学勧告について、それが直接憲法の右基本的人権保障規定に違反するかどうかを論ずる余地はないものというべきである。本件校則が社会通念上不合理であるとはいえないとした原審の判断は、正当として是認できる。60頁
台湾人元日本兵戦死傷補償請求事件最三判平4・4・28判時1422-91台湾住民である軍人軍属が援護法及び恩給法の適用から除外されたのは、台湾住民の請求権の処理は日本国との平和条約及び日華平和条約により日本国政府と中華民国政府との特別取極の主題とされたことから、台湾住民である軍人軍属に対する補償の問題もまた両国政府の外交交渉によって解決されることが予定されたことに基づくものと解されるのであり、そのことは十分な合理的根拠があるものというべきである。本件国籍条項は、憲法14条に関する前記大法廷趣旨に徴して同条に違反するものとはいえない。72頁
成田新法訴訟最大判平4・7・1民集46-5-437工作物等使用禁止命令取消等請求事件。暴力主義的破壊活動等防止し、前記新空港の設置、管理等の安全を確保することには高度かつ緊急の必要性があるというべきであるから、以上を総合して衡量すれば、規制区域内において暴力主義的破壊活動者による工作物の使用を禁止する措置を採り得るとすることは、公共の福祉による必要かつ合理的なものであるといわなければならない。右命令により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等は、新空港の設置、管理等の安全という国家的、社会経済的、人道的見地からその確保が極めて強く要請されているものであって、高度かつ緊急の比較衡量を有するものであることなどを総合衡量すれば、右命令をするに当たり、その相手方に対し事前に告知、弁解、防御の機会を与える機会を与える旨の規定がなくても、本法3条1項が憲法31条の法意に反するものということはできない。154,291頁
種類販売業免許制違憲訴訟最三判平4・12・15民集46-9-2829酒税は、本来、消費者にその負担が転嫁されるべき性質の税目であること、種類の販売業免許制度によって規制されるのが、そもそも致酔性を有する嗜好品である性質上、販売秩序維持等の観点からもその販売について何らかの規制が行われてもやむを得ないと考えられる商品である酒類の販売の自由にとどまることをも考慮すると、当時においてなお酒類販売業免許制度を存置すべきものとした立法府の判断が、政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理であるとまでは断定しがたい。254頁
箕面忠魂碑・慰霊祭訴訟最三判平5・2・16民集47-3-1687被上告人の本件各慰霊祭への参列は、その目的は、地元の戦没者の慰霊、追悼のための宗教的行事に際し、戦没者遺族に対する社会的儀礼を尽くすという、専ら世俗的なものであり、その効果も、特定の宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為とは認められない。したがって、本件参列は、宗教とのかかわり合いの程度がわが国の社会的、文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目標との関係で相当とされる限度を超えるものとは認められず、憲法上の政教分離原則及びそれに基づく政教分離規定に違反するものではない。140頁
ヒッグス・アラン事件最二判平5・2・16判時1452-37国会議員の選挙権を有する者を日本国民に限っている公職選挙法9条1項の規定が憲法15条、14条に違反するものではないことは最大判昭53・10・4民集32-7-1223の趣旨に徴して明らかであり、これと同旨の原審の判断は、正当として是認できる。63頁
ロッキード事件(丸紅ルート)最大判平7・2・22刑集49-2-1運輸大臣が全日空に対しL1011型機の選定購入を推奨する行為は、運輸大臣の職権限に属する行為であり、内閣総理大臣の運輸大臣に対し右勧奨行為をするように働きかける行為は、内閣総理大臣が運輸大臣に対する指示という職務権限に属する行為ということができるから、田中角栄が内閣総理大臣として運輸大臣に前記働き掛けをすることが、賄賂罪における職務行為に当たるとした原判決は、結論において正当として是認することができるというべきである。463頁
地方議会議員選挙の投票権最三判平7・2・28民集49-2-639国民主権の原理及びこれに基づく憲法15条1項の規定の趣旨に鑑み、地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることも併せ考えると、憲法93条2項にいう「住民」とは、地方公共団体内の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当であり、右規定は、我が国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない。64頁
泉佐野市民会館使用不許可事件最三判平7・3・7民集49-3-687本件不許可処分は、本件集会の目的やその実質上の主催者と目される中核派という団体の性格そのものを理由とするものではなく、また、Yの主観的な判断による蓋然的な危険発生のおそれを理由とするものでもなく、中核派が、本件不許可処分のあった当時、関西新空港建設に反対して違法な実力行使を繰り返し、対立する他のグループによる抗争を続けてきたという客観的事実からみて、本件集会が本件会館で開かれていたならば、本件会館内又はその付近の路上等においてグループ間で暴力の行使を伴う衝突が起こるなどの事態が生じ、その結果、グループの構成員だけでなく、本件会館の職員、通行人、付近住民等の生命、身体又は財産が侵害されるという事態を生ずることが、具体的に明らかに予見されることを理由とするものと認められる。したがって、本件不許可処分が憲法21条、地方自治法244条に違反するということはできない。156頁
日本新党繰上当選無効訴訟最一判平7・5・25民集49-5-1279政党等に対しては、高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営することのできる自由を保障しなければならないのであって、このような政党等の結社としての自主性のかんがみると、政党等が組織内の自主的運営として党員等に対してした除名その他の処分の当否については、原則として政党等による自主的な解決にゆだねられているものと解される。487頁
非嫡出子相続分規定違憲訴訟最大決平7・7・5民集49-7-1789民法が法律婚主義を採用した結果として、婚姻関係から出生した嫡出子と婚姻外の関係から出生した非嫡出子との区別が生じ、親子関係の成立などにつき異なった規律がされ、また内縁の配偶者には他方の配偶者の相続が認められないなどの差異が生じてもそれはやむを得ないところといわなけばならない。本件規定の立法理由は、法律上の配偶者との間に出生した嫡出子の立場を尊重するとともに、他方、被相続人の子である非嫡出子の立場にも配慮して、非嫡出子に嫡出子の2分の1の法定相続分を認めることにより、非嫡出子を保護しようとしたものであり、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものと解される。現行民法は法律婚主義を採用しているのであるから、右のような本件規定の立法理由にも合理的な根拠があるというべきあり、本件規定が非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1としたことが、右立法理由との関連において著しく不合理であり、立法に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えたものということはできないのであって、本件規定は、合理的理由のない差別とはいえず、憲法14条1項に反するものとはいえない。89頁
女性の再婚禁止期間違憲訴訟最三判平7・12・5判時1563-81国会議員は、立法に関しては、原則として、国民全体に関する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではなく、国会ないし国会議員の立法行為(立法の不作為含む。)は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会が合えて当該立法を行うというように、容易に想定しがたいような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項適用上、違法の評価を受けるものではないことは、当裁判所の判例とするところである(最一判昭60・11・21民集39-7-1512)。79頁
外国人指紋押なつ拒否事件最三判平7・12・15刑集49-10-842在留外国人の指紋押なつ制度は、戸籍制度のない外国人の人物特定につきもっとも合理的な制度として制定されたものでその立法目的には十分な合理性があり、かつ必要性も肯定できる。その具体的な制度内容も、押なつ義務が3年に一度で、押なつ対象指紋も一指のみであり、加えて、その強制も罰則による間接強制のとどまるものであり、精神的、肉体的に過度の苦痛を伴うものであるとはいえず方法としても、一般的に許容される限度を超えない相当なものであったと認められる。50頁



※課題10
 7月11日提出の課題は平成8年〜平成12年の判例13件である。
オウム真理教解散命令事件最一決平8・1・30民集50−1−199宗教法人解散命令に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件。本件解散命令は、宗教団体であるオウム真理教やその信者らの精神的・宗教的側面に及ぼす影響を考慮しても。抗告人の行為に対処するのに必要でやむを得ない法的規制であるということができる。また、本件解散命令は、法81条の規定に基づき、裁判所の司法審査によって発せられたものであるから、その手続の適正も担保されている。131頁
神戸高専剣道実技履修拒否事件最二判平8・3・8民集50−3−469信仰上の理由による剣道実技の履修拒否を、正当な理由のない履修拒否と区別することなく、代替措置が不可能というわけでもないのに、代替措置についてなんら検討することなく、体育科目を不認定とした担当教員らの評価を受けて、原級留置処分をし、さらに不認定の主たる理由および全体成績について勘案することなく、2年続けて原級留置となったため進級等規程および退学内規に従って学則にいう「学力劣等等で成業の見込みがないと認められる者」に当たるとし、退学処分をしたという上告人の措置は、考慮すべき事項を考慮しておらず、または考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものを評するほかはなく、本件各処分は裁量の範囲を超える違法なものといわざるを得ない。133頁
南九州税理士会事件最三判平8・3・19民集50−3−615選挙権被選挙権停止処分無効確認等請求事件。法が税理士会を強制加入の法人としている以上、その構成員である会員には、様々の思想・信条および主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている。したがって、税理士会が右の方式により決定した意志の基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にもおのずから限界がある。26頁
沖縄代理署名訴訟最大判平8・8・28民集50−7−1952地方自治法151条の2第3項の規定に基づく職務命令執行命令裁判請求事件。沖縄県における駐留軍基地の実情及びそれによって生じたとされる種々の問題を考慮しても、同県内の土地を駐留軍の用に供することがすべて不適切で不合理であることが明白であって、Xの適法な裁量判断の下に同県内の土地に駐留軍用地特措法を適用することがすべて許されないとまでいうことはできないから、同法の同県内での適用が憲法前文、9条、13条、14条、29条3項、92条に違反するというに帰する論旨は採用することができない。488頁
愛媛玉串料訴訟最大判平9・4・2民集51−4−1673靖国神社及び護国神社は憲法89条にいう宗教法上の組織又は団体に当たることが明らかであるところ、以上に判示したところからすると、本件玉串料等を靖国神社又は護国神社に前期のとおり奉納したことによってもたらされると県と靖国神社等とのかかわり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものと解されるのであるから、本件支出は、同条の禁止する公金の支出に当たり、違法というべきである。147頁
第三次家永教科書訴訟上告審最三判平9・8・29民集51−7−2921修正意見を付することは、申請者がこれに応じて訂正、削除又は追加などの措置をしなければ教科書として不合格となるというものであるから、合格に条件を付するものであり、これが国家賠償法上違法となるかどうかについては前記のような判断を要する。これに対して、改善意見は、検定の合否の直接の影響を及ぼすものではなく、文部大臣の助言、指導の性質を有するものと考えられるから、教科書の執筆者又は出版社がその意に反してこれに服さざるを得なくなどの特段の事情がない限り、その意見の当不当にかかわらず、原則として、違法の問題が生ずることはないというべきである。…文部大臣が、七三一部隊に関する事項を教科書に記述することは時期尚早として、原稿記述を全部削除する必要がある旨の修正意見を付したことには、その判断の過程に、検定当時の学説状況の認識及び旧検定基準に違反するとの評価に見過し難い過誤があり、裁量権の範囲を逸脱した違法があるというべきである。 365頁
病院長自殺国賠訴訟最三判平9・9・9民集51−8−3850本件発言が法律案の審議という国会議員の職務に関係するものであったことは明らかであり、また、Y1が本件発言をするについてXに違法又は不当な目的があったとは認められず、本件発言の内容が虚偽であるとも認められないとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができる。したがって、Y2の国家賠償法上の責任を否定した原審の判断は、正当として是認することができる。452頁
寺西判事補分限裁判最大決平10・12・1民集52−9−1761分限事件については憲法82条1項の適用はないものというべきである。498頁
接見交通制限事件最大判平11・3・24民集53−3−514刑訴法は、身体の拘束を最大でも23日間(又は28日間)に制限しているのであり、被疑者の取調べ等の捜査の必要接見交通権の行使との調整を図る必要があるところ、刑訴法39条3項本文の予定している接見等の制限は、弁護人等からされた接見等の申出を全面的に拒むことを許すものではなく、単に接見等の日時を弁護人等の申出とは別の日時とするか、接見等の時間を申出より短縮させることができるにすぎず、同項が接見交通権を制約する程度は低いというべきである。また、前記のとおり、捜査機関において接見等の指定ができるのは、弁護人等から接見等の申出を受けたときに現に捜査機関において被疑者を取調べ中である場合などのように、接見等を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られ、しかも右要件を具備する場合には、捜査機関は、弁護人等と協議してできる限り速やかな接見等のために日時等を指定し、被疑者が弁護人等と防御の準備をすることができるような措置を採らなければならないのである。このような点からみれば、刑訴法39条3項本文の規定は、憲法34条前段の弁護人依頼権の保障の趣旨を実質的に損なうものではない。320頁
衆議院議員定数不均衡訴訟(平成11年判決)最大判平11・11・10民集53−8−1441選挙区間における人口の最大格差は、1対2.137であり、右区割りが区画審設置法3条2項の基準に直ちに違反するとはいえない。101頁
重複立候補制・比例代表制・小選挙区制違憲訴訟最大判平11・11・10民集53−8−1577憲法は両議院の議員の各選挙制度の仕組みの具体的決定を原則として国会の広い裁量にゆだねている。国会が新たな選挙制度の仕組みを採用した場合には、その具体的に定めたところが、右の制約や法の下の平等などの憲法上の要請に反するため国会の右のような広い裁量を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである。…同時に行われる二つの選挙に同一の立候補者が重複して立候補することを認めるか否かは、選挙制度の仕組みとして、国会が裁量により決定することができる事項であるといわざるを得ない。…小選挙区制は、選挙を通じて国民の総意を議席に反映させるひとつの合理的方法ということができ、これによって選出された議員が全国民の代表であるという性格と矛盾抵触するものではないと考えられるから、小選挙区制を採用したことが国会の裁量の限界を超えるということはできず、所論の憲法の要請や各規定に違反するとは認められない。417頁
覚せい剤密売電話傍受事件最三決平11・12・26刑集53−9−1327通信傍受法施行以前の事件。最高裁は、「電話傍受は、これを行うことが犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められる場合に限り、かつ、前述のような手続きに従うことによって始めて実施され得ることなどを考慮すると、右の点を理由に検証許可状による電話傍受が許されなかったとまで解するのは相当でない。」として捜査機関による電話傍受を肯定した。234頁
エホバの証人輸血拒否事件最三判平12・2・29民集54−2−582患者が、輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否すると明確な意思を有している場合、このような意思決定をする権利は、人格権の一内容として尊重されなければならない。…本件においては、医師らは、説明を怠ったことによりXが輸血を伴う可能性のあった本件手術を受けるか否かについて意思決定をする権利を奪ったものといわざるを得ず、この点において同人の人格権を侵害したものとして、同人がこれによって被った精神的苦痛を慰謝すべき責任を負うものといわなければならない。59頁



※課題11
 7月18日提出の課題は平成13年〜平成18年の判例11件である。
立法の委任の範囲最一判平14・1・31民集56-1-246児童扶養手当資格喪失処分取消請求事件。施行令1条の2第3号が父から認知された婚姻外懐胎児童を本件括弧書により児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲から除外したことは法の委任の趣旨の反し、本件括弧書は法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効と解すべきである。443頁
証券取引法164条合憲判決最大判平14・2・13民集56-7-1439証券取引法164条1項は証券取引市場の公平性、公正性を維持するとともにこれに対する一般投資家の信頼を確保するという目的による規制を定めるものであるところ、その規制目的は正当であり、規制手段が必要性または合理性に書けることが明らかであるとはいえないのであるから、同項は、公共の福祉に適合する制限を定めたものであって、憲法29条に違反するものではない。266頁
郵便法違憲訴訟最大判平14・9・11民集56-7-1439神戸地裁尼崎支部の発した債権差押命令の正本が特別送達の方法で出されたが、郵便事業者が名宛人に直接渡さず、私書箱に投函したため、送達が一日遅れ、その間に債務者が預金を引き出したため、差押できなかった事案。送達事務を行う国に対して、787万円の損害賠償請求を求めて提訴した。一審、控訴審は、郵便法68条、73条に基づき、請求を棄却したため、原告は郵便法68条・73条が憲法17条に違反するとして上告した。
最高裁は、「郵便法68条、73条の規定のうち、特別送達郵便物について、郵便業務従事者の軽過失による不法行為責任を免除し、または制限している部分は、憲法17条に違反し、無効である」として、原判決を破棄した。
435頁
少年犯罪の「推知報道」事件最二判平15・3・14民集57-3-229少年法61条に違反する推知報道かどうかは、その記事等により、不特定多数の一般人基準がその者を当該事件の本人であると推知することができるかどうかを基準にして判断すべてきところ、本件記事は、Xについて、当時の実名と類似する仮名が用いられ、その経歴等が記載されているものの、Xと特定するに足りる事項の記載はないから、Xと面識等のない不特定多数の一般人が、本件記事により、Xが本件事件の本人であることを推知することができるとはいえない。したがって、本件記事は、少年法61条の規定に違反するものではない。31頁
参議院非拘束名簿式比例代表制違憲訴訟最大判平16・1・14民集58-1-1国会が政党の政治意思を国政に反映させる名簿式比例代表制を採用することは、その裁量に属することが明らかであるといわなければならない。そして、名簿式比例代表制は、政党の選択という意味を持たない投票を認めない制度であるから、本件非拘束名簿式比例代表制の下において、参議院名簿登載者個人には投票したいが、その者の所属する参議院名簿届出政党等には投票したくないという投票意思が認められないことをもって、国民の選挙権を侵害し、憲法15条に違反するものというまでいうことはできない。また、名簿式比例代表制の下においては、名簿登載者は、各政党に所属する者という立場で候補者となっているのであるから、改正公選法が参議院名簿登載者の氏名の記載のある投票を当該参議院名簿登載者の所属する参議院名簿届出政党に対する投票としてその得票数を計算するものとしていることには、合理性が認められるのであって、これが国会の裁量権の限界を超えるものとは解されない。421頁
参議院議員定数不均衡訴訟(平成16年判決)最大判平16・1・14民集58-1-56平成13年7月29日施行の参議院選挙についての選挙無効請求事件。選挙区間の最大格差は1対5.06であった。
多数意見は、「本件改正は、憲法が選挙制度の具体的な仕組みの決定につき国会にゆだねた立法裁量権の限界を超えるものではな」いとして合憲の判断をした(9人)。しかし、そのうち4人が「現行の定数配分は、合憲とはいえないのではないかとの疑いが強い」として次回選挙においての是正がなされなければ、違憲判断がなされる余地があるとの意見を付した。6人の反対意見は、「本件定数配分規定は、憲法上の選挙権平等の原則に大きく違背し、憲法に違反するものであることが明らかである」と違憲判断を下した。
105頁
外国人管理職選考受験拒否事件上告審最大判平17・1・26民集59-1-128東京都において、管理職の任用制度を適正に運営するために必要があると判断して、職員が管理職に承認するための資格要件として当該職員が日本の国政を有する職員であることを定めたとしても、合理的な理由に基づいて日本の国籍を有する職員と在留外国人である職員とを区別するものであり、上記の措置は、労働基準法3条にも、憲法14条1項にも違反するものではない。68頁
公立図書館の図書廃棄事件最一判平17・7・14民集59-6-1569公立図書館の図書館職員は、独断的な評価や個人的な好みにとらわれることなく、公正に図書館資料を取り扱うべき職務上の義務を負うものというべきであり、これを廃棄することは、図書館職員としての基本的な職務上の義務に違反するものといわなければならない。…公立図書館において、その著作物が閲覧に供されている著作者が有する思想の自由、表現の自由は、法的保護に値する人格的利益であると解するのが相当であり、公立図書館の図書館職員である公務員が、図書の廃棄について、基本的な職務上の義務に反し、著作者又は著作物に対する独断的な評価や個人的好みによって不公正な取り扱いをしたときは、当該図書の著作者の上記人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となるというべきである。本件廃棄は、公立図書館であるY市図書館の司書Aが、X1やその賛同者及びその著書に対する独断的な評価と反感から行ったものというのであるから、Xらは、本件廃棄により、上記人格的利益を違法に侵害されたというべきである。222頁
在外日本人選挙権制限規定違憲判決最大判平17・9・14民集59-7-2087国会が10年以上の長きにわたって在外選挙制度を何ら創設しないまま放置し、本件選挙において在外国民が投票をすることを認めなかったことについては、やむを得ない事由があったとは到底いうことができない。…本件の予備的確認請求にかかる訴えは、公法上の当事者訴訟のうち公法上の法律関係に関する確認の訴えと解することができる…。しかしながら、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けるというべきである。最一判昭和60年11月21日民集39巻7号1512頁は、以上と異なる趣旨をいうものではない。407頁
旭川国民健康保険料条例訴訟最大判平18・3・1民集60-2-587本件条例は、保険料率算定の基礎となる賦課総額の算定基準を明確に規定した上で、その算定に必要な上記の費用及び収入の各見込額並びに予定収納率の推計に関する専門的及び技術的な細目にかかわる事項を、旭川市長の合理的な選択にゆだねたものであり、また、上記見込額等の推計については、国民健康保険事業特別会計の予算及び決算の審議を通じて議会による民主的統制が及ぶものということができる。515頁
NHK記者証言拒否事件最三決平18・10・3民集60-8-2647証拠調べ共助事件における承認の証言拒否についての決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件。NHK報道は、公共の利害に関する報道であることは明らかであり、その取材の手段、方法が一般の刑罰法令に触れるようなものであるとか、取材源となった者が取材源の秘密の開示を承諾しているなどの事情はうかがわれず、一方、本件基本事件は、株価の下落、配当の減少等による損害の賠償を求めているものであり、社会的意義や影響のある重大な民事事件であるかどうかは明らかでなく、また、本件基本事件はその手続がいまだ開示(ディスカバリー)の段階にあり、公正な裁判を実現するために当該取材源に係る証言を得ることが必要不可欠であるといった事情も認めることはできない。したがって、相手方は、民訴法197条1項3号に基づき、本件の取材源に係る事項についての証言を拒むことができるというべきであり、本件証言拒絶には正当な理由がある。189頁

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